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不動産レポート



ケーススタディ 2 - 生保

16棟280億円を手始めに、今後も資産規模を拡大。
ビル購入のポイントは、何よりもその収益性。

マニュライフ生命が購入したオフィスビルの例
 
マニュライフ生命が購入したオフィスビルの例1マニュライフ生命が購入したオフィスビルの例2マニュライフ生命が購入したオフィスビルの例3マニュライフ生命が購入したオフィスビルの例4マニュライフ生命が購入したオフィスビルの例5
 


エクイティ100%確保を目的に

  マニュライフ生命保険株式会社は、カナダに本拠を置くマニュライフ・ファイナンシャル社のグループ企業で、1999年4月、第百生命からの営業権取得により日本進出をスタートさせた。日本ではまだ馴染みの薄いマニュライフ・ファイナンシャル社だが、北米ではトップクラスの金融コングロマリットとして知られる。ビルオーナーとしても、カナダ・米国で計150棟のオフィスビル(カナダ約22万坪、米国約13万坪)を所有し、また、自社内でプロパティマネジメントを行うなど、グローバルスタンダードに基づくビル運用のプロフェッショナルだ。この経験とスキルを背景に、同社は今年3月、日本国内において初めてのオフィスビル購入を行った。
 「昨年秋、今後の日本における事業戦略の一つとして、資産運用の多様化と運用効率の向上に向け不動産投資に積極的に取り組んでいく方針が確認されました。今回、全国で16棟のオフィスビルを購入するに至ったわけですが、これは、その第一弾と言うべきものです。今後も、同事業計画戦略に沿って、高い運用収益を望める良質なオフィスビル物件の購入を進めていきたいと考えています」。

 こう語るのは、同社の不動産投資を統括するアシスタントヴァイスプレジデント・守邦ロバート氏である。

 確かに現在の日本では、株価の低迷に加えて、国債等への投資から得られる利回りは驚くほど低水準だ。国内生保各社においては逆ざやの状況が叫ばれて久しいが、強固な財務基盤を誇る外資系金融機関と言えど、より高い利回りを追求するのは当然の動きであろう。都心部のオフィスビルの初期利回りが、現在4?9%であることを考えると、入居率の落ち込みがなく安定収入が見込めるのならば、選別的な不動産投資から、相当的に高い資産運用効果が期待できることに間違いはない。
 「私どもがビルを購入する際、最も重視するのはその収益性です。当該ビルが生み出すキャッシュフローや、その利回りを継続的に期待できるかどうかの見極めが、購入に至る最大のポイントとなります。資産運用を目的にビルを購入するとは言え、当社の戦略はあくまで長期保有による安定的な収益確保及び成長です。ですから、購入物件にプロパティマネジメントを施して売却し、その利ざやを取る不動産投資会社や、借入金利とビル収益利回りの差からレバレッジを効かせ運用を図る不動産ファンド等の事業戦略から比べると、はるかに保守的なスタンスと言えるでしょう。また、ポートフォリオの特性も、将来的には店舗やレジデンシャルも視野に入れてはいますが、今のところ、最もリスクが把握しやすいオフィスビルに限定していく考えです」。

 その他、同社の慎重な不動産投資の特徴は、区分所有は行わず100%保有にこだわるところにも表れている。単純に利回り目的のみのビル購入ならば、大型ビルの数フロアといった所有でもなんら問題はない。逆に、妥当な価格で競争力のある大型ビルを所有できると見る向きもあるほどだ。しかし、それでは独自のビル運営が困難になり、いざ入居率が低下した時に、積極的な対応ができないというリスクが存在するとの見方もある。また、リスクヘッジの観点以外にも、同社はビルの購入に当たり、ブランドイメージの確立強化をその目的に挙げており、そういった意味でも区分所有はしない考えにある。


収益性に対する売り手との温度差

  昨今は減損会計の影響もあり、かつての「ビルを売る」ということへのマイナスイメージは確実になくなりつつある。逆に本社ビルの売却などは、株式市場では好意的に受け取られているほどである。守邦氏も、「市場におけるオフィスビルの流動性は確実に増してきており、購入を検討できる物件は多い」と語る。しかし、売り物件が増えたからと言って、ビルを購入しやすい状況になったとは決して言えないようだ。守邦氏が特に感じるのは、キャッシュフローと情報開示に関する売り手サイドとの認識の差だと言う。
 「テナントが入居し、現在キャッシュフローを生んでいるビルと、テナントが未入居のビルとのプライスの差に関して、売り手サイドと私どもの捉え方には、いまだに大きな隔たりがあると感じます。たとえどんなに立地が良くグレードが高いビルであっても、購入時に収益がないならば、満室稼働のビルと同等の価値ということはありえません。テナント募集にかかるコストも加味しなければなりませんし、昨今の市況下では、ある程度のフリーレントも必要でしょう。それ以前に、空室のリスクが存在するわけですから、その点も考慮しなければならないわけです。市場では不動産価格の下落が続いていますが、長期にわたりテナントが未入居のオフィスビルに関しては、売り手サイドがまだ強気すぎるのではないかと感じています。また、いくら魅力的な物件であっても、購入に必要な各種データがそろっていなければ売買は難しくなるといった考え方が、さらに浸透する必要があるでしょう。市場の透明性が増すことでディールのスピードも短くなりますし、そのことが、売買市場の活性化にも繋がっていくのではないかと思います」。

 マニュライフの日本不動産市場での今後の動きに、注目が集まる。

今、ビルを買うということ 2003年夏季号 |2003年08月22日